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2025/08/05 07:25

世界的に環境規制が強化される中、船舶業界では燃費削減とCO₂排出削減が重要課題となっています。その解決策として注目されているのが、ナノバブル(ウルトラファインバブル)を活用した流体摩擦低減技術です。

船底付近にナノバブルを発生させて船体と海水の間に微細な気泡層を形成することで摩擦抵抗を軽減し、推進効率を向上させるという仕組みです。本記事では、国内外の実証試験や研究データをもとに、その成果を詳しく紹介します。


1. 船舶における流体摩擦の問題

船舶の推進抵抗の約70%は、海水との摩擦抵抗(流体摩擦)によるものです。
この摩擦を低減できれば、

  • 燃料消費の削減(燃費改善)

  • CO₂やNOx排出の削減

  • 運航コストの低減
    といったメリットが得られます。

従来は船底塗装や形状設計による改善が中心でしたが、ナノバブルによる摩擦低減は従来の限界を超える新技術として注目されています。


2. ナノバブル摩擦低減の仕組み

ナノバブルを船底から放出することで、

  • 船体表面と海水の間に微細な気泡層が形成

  • 気泡層が「潤滑膜」となり摩擦抵抗を減少

  • ナノバブルのマイナス電荷が水分子の粘性を低下させ、流れが滑らかに

特に、マイクロバブル+ナノバブルの複合注入により、可視化できる泡層と不可視のナノレベル泡層の相乗効果で、摩擦低減が大きく強化されることが研究で示されています。


3. 三菱重工業によるスーパーキャビテーション研究

三菱重工業は「スーパーキャビテーションと微細気泡技術の応用」として、ナノバブル・マイクロバブルの摩擦低減試験を実施しました。

  • 試験方法:水槽実験および小型水中ロケット試験

  • 結果:Ventilation(気泡注入)により最大75%の摩擦抵抗低減を確認

  • 意義:実海域での船舶摩擦低減技術に転用可能な基礎データを取得

この研究は、船舶分野だけでなく水中ロケット・無人潜水機などの高速化にも応用可能な知見とされています。


4. 実証試験:国内外での成果

(1) 国内試験(日本)

  • 商船三井・川崎重工による試験
    ナノバブル供給装置をタンカーに設置し、航行試験を実施。
    燃料消費量が約8〜10%削減され、CO₂排出量の低減も確認。

  • 東京海洋大学の水槽実験
    ナノバブル供給水流で模型船体を試験した結果、流体摩擦係数が約15%低減


(2) 国際試験(海外)

  • 韓国造船企業の試験
    大型コンテナ船でマイクロバブルとナノバブルの併用技術を実証。
    結果:摩擦抵抗10〜12%減、燃料費削減率7〜9%

  • 欧州研究機関のシミュレーション試験
    CFD解析により、ナノバブル供給で船体境界層が薄まり、推進効率が4〜6%改善と予測。


5. ナノバブル摩擦低減の導入効果

✅ 燃費削減・CO₂削減

  • 燃費改善率:5〜10%(船種・条件による)

  • CO₂排出削減:年間数千トン規模(大型船舶の場合)

✅ 船舶の運航コスト削減

  • 燃料価格高騰対策として有効

  • 国際的な燃費規制(EEXI・CII規制)対応に直結

✅ メンテナンス削減

  • ナノバブルによる船底の防汚効果で、海洋生物の付着も抑制


6. 技術的課題と今後の展望

実用化に向けた課題としては、

  • 高流速下でのナノバブル濃度維持

  • 発生装置の省エネ化・小型化

  • 実船データのさらなる蓄積
    が挙げられます。

しかし、国際海事機関(IMO)の規制強化や燃料コスト上昇を背景に、ナノバブル摩擦低減は次世代エコシップ技術の中核になると期待されています。


まとめ:ナノバブル技術で船舶摩擦低減は現実に

ナノバブルを用いた摩擦低減技術は、既に国内外で実証試験により燃費削減効果が確認され、商用導入が視野に入っています。
エネルギー効率改善・CO₂削減・規制対応の観点から、今後多くの船舶で標準化される可能性が高いでしょう。